量子測定。先週の読書感想文

雑誌「数学」61巻2号の「量子情報の数学的基礎」という論説を読んだ。こっちの内容は、完全に数学的だけど、大体同じ内容が数学的に細かい部分を省略した形で

不確定性原理・保存法則・量子計算
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002069559

に書いてある。


歴史的な経緯は詳しく知らないけど、通常教科書でHeisenbergの不確定性原理として説明/証明されているものを実際に示したのは、KennerdとRobertsonという人であるらしい。それで教科書ではこの不確定性原理の解釈として、Heisenbergによるガンマ線顕微鏡の思考実験(「電子の位置を測定しようとして、波長の短いガンマ線当てると、電子と相互作用して、運動量が不確定になる」という話)がでてきたりするけど、前者の「Kennerd-Robertsonの不等式」はCCR(正準交換関係)からの帰結なので測定とか関係なく成り立つ"量子揺らぎ"の話で、一方後者のHeisenbergの元々の議論は測定誤差と撹乱に関わる話なので、この二つは別物と考えるべきというようなことが述べてある。

というような話は、Wikipediaにも書いてあった。Wikipedia偉いな!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%A2%BA%E5%AE%9A%E6%80%A7%E5%8E%9F%E7%90%86


若干ややこしいのは、普通、不確定性原理と呼んでいるのは、"量子揺らぎ"に関する方の話だけど、測定誤差と撹乱に関する方の話も、歴史的経緯を考えると、不確定性原理と呼ばれるに値するし、上の論説でも、後者を不確定性原理と書いてたりする。まあ、他に呼び方ないし。ただ現在、大部分の物理学者が不確定性原理と呼ぶとき、頭においているのは、Kennerd-Robertsonの不等式の方だけど思うけど


肝心の小澤の不等式の証明は書いてなかったけど、簡単にできそうな気がしたので少し考えてみたものの、できなかったのでカンニングしたら、簡単に証明してあった

カンニング先↓
Physical content of Heisenberg's uncertainty relation: Limitation and reformulation
http://arxiv.org/abs/quant-ph/0210044