スピン3以上のゲージ場(1)

物理に於ける代数的なテンソル計算の例
http://d.hatena.ne.jp/m-a-o/20170131#p1
の"おまけ"の続き。


狭い意味では、ゲージ場は定義によってスピン1であるけども、higher spin gauge fieldという言葉は(最近では?)一般的に使われているようなので、それを踏襲する。これは1996年のVasilievの論文(arXiv:hep-th/9611024)以降市民権を得たのだと思う(少なくとも、1980年頃の論文で用語自体は登場している)(私はVasilievの理論については、殆ど何も知らない)。この名称の背景には、質量0の(スピン0でない)ボソンは、"ポテンシャル"を持つことができ、スピン1の場合は、ベクトルポテンシャルと一致するという事実があり、これを以って、質量0の(スカラー場でない)ボソン場をhigher spin gauge fieldと呼ぶ。Vasilievの論文で引用されているいくつかの論文では、表現論的な議論は特にされていないが、

[1] Massless Fields as Unitary Representations of the Poincare Group
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/prop.19790270403/abstract

は表現論的視点から類似の議論を行っているように見える。これは1979年の論文で、大体この頃、higher spin gauge fieldに関するコンセンサスができたっぽい


通常の電磁場と一光子状態は、形式的には同じ形のMaxwell方程式を満たす(従って、共に"ベクトルポテンシャル"を持つ)ものの、前者は実数値の場で特に規格化されていない一方、後者は複素数値の場で自然なユニタリ内積が定まっていて(多分)規格化されているなど、大きな違いがある(規格化されていると積極的に考えるべき理由はないけど、定数倍しても観測量に影響がない)。Vasilievの理論は古典論であるので、前者のタイプの場を扱っている一方、論文[1]で扱っているのは、後者のタイプの場である。この2つの場の関係は、物理の教科書の説明では、以下のような感じだと思う。

『通常の電磁場を第二量子化することによって、光子の状態空間を得ることができ、この中には、光子数が正確にN個の状態が含まれていて、特に光子数が1個の状態からなる部分空間を取ってくることができる。これが、Poincare代数のスピン1のmasslessユニタリ表現(ヘリシティ±1のmassless既約ユニタリ表現の直和)と同値になる(はず)。そして、光子の状態空間は、この一光子状態空間の対称テンソル積として得られる』

この関係は、数学的に証明されている事柄ではないと思うので、どっちのタイプの場を扱ってるかは意識しておいたほうがいい気がする。以下では「相対論的場の理論の一粒子状態はPoincare代数の既約ユニタリ表現で分類される」という、教科書レベルで広く受け入れられてる(と思う)認識を元に、(0でない)整数ヘリシティを持つmassless既約ユニタリ表現に対応する一粒子状態が、"higher spin gauge fieldのsingle particle state"であるということにする。これは、Vasiliev理論で扱われている場とは正確には異なるものだ(と思う)けど、多くの数学的性質を共有しているっぽい



整数スピンsを持つmassless粒子は、Lorentz代数の表現D(s,0)+D(0,s)に値を取る場となっている。これはtwistor理論で完全に確立している事実で、ferimionでも同様に成立し、wave equationも分かっている。複素表現としては、D(s,0)とD(0,s)の2つの既約表現があり、helicityの正負と対応している。s=1の時は、D(1,0)+D(0,1)は2階の反対称テンソル場なので、これらの場がスピンsを持つゲージ粒子のfield strengthの場であると推測するのは自然。Lorentz代数の表現を忘れて単にベクトル空間として見れば
D(s,0) \simeq S^{2s}(\mathbf{C}^2) \simeq \mathbf{C}^{2s+1}
D(0,s) \simeq S^{2s}(\mathbf{C}^2) \simeq \mathbf{C}^{2s+1}
という同型があり、twistor理論で"既約なspinor場は対称spinor場となる"という事実(単にsl(2,C)の有限次元既約表現は自然表現の対称テンソル積表現で尽きるという事実の帰結)に関連している。論文[1]では、D(s,0)+D(0,s)が
\bigotimes^{2s} D(1/2,1/2)
の部分表現として実現できる(D(1/2,1/2)はベクトル表現)という事実を使って、ランク$2s$のテンソル場として、扱っている。普通の(スピン1の)ゲージ場の曲率は2階の反対称テンソルで、Weylテンソルは4階のテンソルであることを思い出せば、自然な見方であるのかもしれない。


疑問)$V=D(1/2,1/2)$として、2階の反対称テンソルの空間は、分割(1,1)に対応するYoung symmetrizerの像として記述される。この空間は、gl(V)の既約表現であると同時に、so(4,C)の既約表現でもある。前回書いたように、分割(2,2)に対応するYoung symmetrizerの像は、代数的曲率の空間と呼ばれ、gl(V)の既約表現であるが、so(4,C)の表現としては可約である。この分解から、WeylテンソルとRicciテンソルが生じる(WeylテンソルはD(2,0)+D(0,2)で、RicciテンソルはD(1,1)+D(0,0)になる)。多分、一般相対論の教科書を見ると、Weylテンソルの名前が出ないことはあってもRicciテンソルの名前が出ないことはないだろうと思われるけど、gl(V)による既約分解を見ることは、意味のあることなのかもしれない。そうすると、スピンsの場合でも、代数的曲率空間に相当する何かがあるだろうか(例えば、分割(s,s)に対応するYoung symmetrizerの像だとか)。論文[1]の式(3.6)(I1)(I2)は、この高階テンソルS^s(\Lambda^2(V))に含まれるという条件に見える。



ゲージポテンシャル。スピン1の場合は、ベクトル場であり、D(1/2,1/2)に値を取る場となっていて、スピン2の場合は、D(1,1)場は対称トレースレステンソル場となるので、一般にはLorentz代数の表現D(s/2,s/2)に値を取る場をポテンシャルとして持つのだろうと予想される。s/2は半整数でないといけないので、これは、bosonの場合しか意味がない(massless fermionがポテンシャル場を持たないとは言えないが)。一般に
S^{k+2}(D(1/2,1/2)) \simeq D(k/2+1,k/2+1) \oplus S^k(D(1/2,1/2)
S^k(D(1/2,1/2)) \simeq \bigoplus_{j=0}^{[k/2]} D(k/2-j,k/2-j)
S^2(D(1/2,1/2)) \simeq D(1,1) \oplus D(0,0)
S^3(D(1/2,1/2)) \simeq D(3/2,3/2) \oplus D(1/2,1/2)
S^4(D(1/2,1/2)) \simeq D(2,2) \oplus D(1,1) \oplus D(0,0)
etc.
という既約分解が成立するので、物理の文献では、単にhigher spin gauge potential field=高階対称テンソル場として扱われているようである。


(※)D(1/2,1/2)の基底がe_0,e_1,e_2,e_3であるとして、Lorentz代数の標準的な表現を考えるとe_0 \otimes e_0 - e_1 \otimes e_1 - e_2 \otimes e_2 - e_3 \otimes e_3は明らかに2階の対称テンソルで、かつLorentz代数の作用は全て0となることは容易に分かる。これが2階の対称テンソルに於けるD(0,0)成分となっている。一般に2つの添字でトレースを取ることで
S^{k+2}(D(1/2),D(1/2)) \to S^k(D(1/2,1/2)
A_{\mu_1 \mu_2 \cdots \mu_{k+2}} \mapsto A^{\lambda}_{\lambda \mu_3\cdots \mu_{k+2}}
のように(k+2)階の対称テンソルから、k階の対称テンソルへの射影が得られる(対称テンソルなので、どの2つの添字を選んでも同じ)


#最近、「古典群の表現論と組み合わせ論(下)」という本を見ていたら、シンプレクティック群と直交群では、(symmetricとは限らない)traceless tensorの空間を、Schur-Weylの時と同様に分解することができて、更に、一般の直交群の対称テンソル積表現の既約分解が、上の分解と同じように与えられていた(108ページ、命題8.26)。最高ウェイトベクトルもYoung symmetrizerを使って計算することができる。


#局所的には、一般相対論の計量は、$GL(4,R)/O(3,1)$に住んでいると言える。この計量の空間には線形性がない一方、上のスピン2のゲージポテンシャルは線形性がある。Lie環のレベルでは
gl(4,\mathbf{C}) \simeq o(4,\mathbf{C}) \oplus S^2(\mathbf{C}^4)
という分解が成立し、右辺の第二成分は、2階の対称テンソルになっている(複素化しているのは、量子論では場が複素数値になるので、計量なども複素化されるべきだろうという理由から)。というわけで、少なくとも、線形近似の範囲で、計量はスピン2のゲージポテンシャルと見なすことが正当化される(と思われている)



次に、ポテンシャルとfield strengthの関係について。数学的に納得できる記述は見たことがなかったけど、論文[1]の8節に書いてある(完)。これを理解するには、Lorentz代数の表現だけ見ていても不十分で、「場」が必要になる。Lorentz代数の(既約とは限らない)有限次元表現空間$V$に対して、「$V$に値を取る場」というのは、通常
V \otimes C^{\infty}(\mathbf{R}^4)
の"ようなもの"をイメージしているのだと思う。4次元Euclid空間は、実Minkowski時空の場合もあるし、物理の人は、運動量空間をよく使う。これは論文[1]でもそんな感じ。こういうのは、代数的に扱いづらいので、もっと限定した形の空間として
V \otimes H_0
を考える。H_0はPoincare代数のhelicity 0のmassless既約表現。とりあえず、重要そうな話として
(1)この空間には、Poincare代数の表現が定義できる(一般にユニタリーではないが)
(2)この空間では、massless Klein-Gordon方程式が、いつでも自動的に成立している。
の2点が確認できる


H_0

Maxwell方程式の表現論(2)Gupta-Bleuler量子化の表現論的側面
http://d.hatena.ne.jp/m-a-o/20151106#p2

ではV_0と書いているのと同じもので
H_0 = \{f \in \mathbf{C}[z_1,z_2,z_3,z_4] | (z_1 \partial_1 + z_2 \partial_2-z_3 \partial_3 - z_4 \partial_4)f = 0\}
という実現を持つ。Poincare代数の作用の仕方は、前にも書いたので省略。例えば、2階の反対称テンソル場は、以下のデータ
F_{\mu \nu} \in H_0 (\mu,\nu=0,1,2,3)
F_{\mu \nu} = -F_{\nu \mu}
と同一視できる。というわけで、場とは、ある条件を満たす4変数多項式の多次元配列である(テストで書いたら0点になりそうな定義)。一般に、helicity hのmassless既約ユニタリ表現は
H_{h} = \{f \in \mathbf{C}[z_1,z_2,z_3,z_4] | (z_1 \partial_1 + z_2 \partial_2-z_3 \partial_3 - z_4 \partial_4)f = 2 h f\}
で実現できる(Poincare代数の作用の仕方は全て同一)



以上の準備のもとで、論文[1]8節に書いてあることを、そのまま読み替えると、例えば、スピン2のゲージポテンシャルからfield strengthへの写像S^2(D(1/2,1/2)) \otimes H_0 \to D(1/2,1/2)^{\otimes 4} \otimes H_0
C_{\mu \nu \rho \sigma} = P_{\mu} P_{\rho} h_{\nu \sigma} - P_{\nu} P_{\rho} h_{\mu \rho} - P_{\mu} P_{\sigma} h_{\nu \rho} + P_{\nu} P_{\sigma} h_{\mu \rho}
となり、これは線形化したWeylテンソルとなっている(この写像がPoincare代数の作用と可換であることは別途確かめる必要がある)。これは、S^2(V) \otimes H_0全体で定義されるが、h_{ab}はtracelessと仮定することで、D(1,1) \otimes H_0上に制限できる。


また、スピン1の時と同様、以下のゲージ変換が存在する
h_{ab} \mapsto h_{ab} + P_{a} \eta_{b} + P_{b} \eta_{a}
ここでh_{ab}に、traceless条件とHilbertゲージ条件を課すことにすると、任意のゲージ変換が許されず\eta_{a}にも条件が必要となる。traceless条件は単に
P^a \eta_{a} = 0
という条件になる。traceless条件がある場合、Hilbertゲージは
P^a h_{ab} = 0
となり、ゲージ変換部分が0となるには
P^a (P_a \eta_{b} + P_b \eta_{a}) = (P_0^2-P_1^2-P_2^2-P_3^2)\eta_{b} + P_b(P^a \eta_{a}) = 0
で、第一項は、massless Klein-Gordon方程式より0になり、第二項は、さっきと同じ条件
P^a \eta_{a} = 0
から0になる(本来のHilbertゲージ条件は、任意のゲージ変換で保たれるので当然。このへんの計算は、重力波の計算で出てくるものと形式的には同一)。ところで、これはLorenzゲージ条件となっている。つまり、
V_{fix}^{(0)} = H_0
V_{fix}^{(1)} = \{ A_{a} \in V \otimes H_0 | P^a A_{a} = 0 \}
V_{g}^{(1)} = \{ A_{a} \in V \otimes H_0 | A_a = P_a f , f \in V_{fix}^{(0)} \}
V_{fix}^{(2)} = \{ h_{ab} \in S^2(V) \otimes H_0 | P^a h_{ab}=0,h^a_{a} = 0 \}
V_{g}^{(2)} = \{ h_{ab} \in S^2(V) \otimes H_0 | h_{ab} = P_a v_b + P_b v_a , v_a \in V_{fix}^{(1)} \}
などと置くと、これらは全部Poincare代数の表現空間となっていて
V_{phys}^{(1)} = V_{fix}^{(1)}/V_{g}^{(1)} \simeq H_{+1} \oplus H_{-1}
がスピン1のmassless粒子の空間(helicity +1/-1の既約ユニタリ表現の直和)で
V_{phys}^{(2)} = V_{fix}^{(2)}/V_{g}^{(2)} \simeq H_{+2} \oplus H_{-2}
がスピン2のmassless粒子の空間(helicity +2/-2の既約ユニタリ表現の直和)となる(と思う)。沢山の表現空間と写像があって(これらの写像は、大体、Poincare代数の作用と可換となっているはず)、ややこしいけど、曲率写像
 C: V_{fix}^{(2)} \to V^{\otimes 4} \otimes H_0
については
 Ker(C) = V_{g}^{(2)}
が成立するはず。スピン1の時の計算は以前やったけど、Im(C)の具体的な記述も同様にできると思う(が、面倒なのでやらない)。論文[1]にはスピン3以上の場合の条件も書いており、同じような形となっている。


論文[1]にも書いてある通り、V_{fix}^{(s)}は、traceless条件から、D(s/2,s/2) \otimes H_0に含まれることが言え、これは[dim D(s/2,s/2)=(s+1)^2]個の独立な成分を持つ場で、ゲージ固定で[tex:dim D*1 \otimes \Lambda(V(1/2,m))]
のはず。V(1,0)の対称テンソル積空間には、V(1,0)の基底ごとにボソンの生成・消滅演算子が作用し、V(1/2,m)の外積空間には、V(1/2,m)の基底ごとにフェルミオンの生成・消滅演算子が作用する。H_{QED}は可算個の基底しか持たないので、電子と光子の相互作用がなければ、H_{QED}にPoincare代数の表現が普通に定義できる。これは自由場の理論なので、特に凄くも何ともないけど、現代の場の量子論の標準的な考えでは、相互作用を入れても、H_{QED}そのものは変わらない(多分)。変わるのは、Poincare代数の作用の仕方で、例えば、Hamiltonian(=Poincare代数の無限小時間並進)には相互作用項が入り、形式的には、その形はよく知られている。Poincare代数では
[K_i , P_i] = i P_0 (i=1,2,3)
なので(ここで、K_i,P_iはLorentz boostと運動量演算子P_0はHamiltonian)、Hamiltonian以外にも相互作用項が入らないと、Poincare代数の作用を整合的に変形できない(はず。全く計算してないけど、運動量と角運動量は、相互作用項とかでないので、boost operatorに付加的な項が出て、適切な交換関係を満たすのだと思う。教科書とかで、そんな記述見たことないけど)。そんで、Hamiltonianの相互作用項は、形式的には
H_{int} \propto  \displaystyle \int \frac{d \mathbf{p} d \mathbf{k}}{\sqrt{|\mathbf{k}|}} (c_{\mathbf{k}}^{+} a_{\mathbf{p}}^{+}a_{\mathbf{p}+\mathbf{k}} + c_{\mathbf{k}} a_{\mathbf{p}}^{+}a_{\mathbf{p}-\mathbf{k}})
という形で、これを
H_{int} = \sum_{\alpha,i,j} p_{\alpha,i,j} c_{\alpha}^{+} a_{i}^{+} a_j + \sum_{\alpha,i,j} q_{\alpha,i,j} c_{\alpha} a_{i}^{+} a_{j}
というふうに書けるだろうと思う(p,qは係数で、具体的な値を計算して決定できるはず)。但し、c_{\alpha}^{+}は光子の生成演算子a_{i}^{+}は電子の生成演算子a_{j}は電子の消滅演算子で、\alphaは一光子の状態空間V(1,0)の基底を走り、i,jは一電子の状態空間V(1/2,m)の基底を走る



結局、(少なくともQEDくらいの)場の量子論が数学的に怪しいことになるのは平面波基底を使うからで、平面波基底は、上のQED状態空間の元でないし(勿論、並進演算子の連続スペクトル状態ではある)(そもそも、数学的な意味では厳密には基底ですらない)、上のQED状態空間は、可算個の基底を持つので、それでHamiltonianとか他の演算子を、ちゃんと書けば何も問題は起きないのでないかというようなことを、1.5年前くらいから考えていて、頑張れば、数学的に厳密なQED Hamiltonianを書けるのじゃないかと思うけど、一向に計算を進める気が起きないので、いくつかやるべき計算について書いておく(各問題につき、できたら10万円支払いますので、できた方は教えてください)


問題1:de Sitter代数so(4,1)の適当な既約ユニタリ表現のcontractionから、Poincare代数iso(3,1)のmassive既約ユニタリ表現を具体的に基底を取って書く(スピン0,1/2の場合くらいあれば十分)


問題2:問題1で計算したPoincare代数のmassive既約ユニタリ表現の基底に対応するMinkowski時空上の関数を具体的に決定すること(これも、スピン0と1/2の場合だけでOK)



問題1について。so(4,1)の既約ユニタリ表現は一杯あるけど、

GENERALIZED EIGENVECTORS AND GROUP REPRESENTATIONS - THE CONNECTION BETWEEN REPRESENTATIONS OF SO(4, 1) AND THE POINCARE GROUP
http://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-94-010-2669-7_8

を読むと、できそうな感じ。練習として、so(2,1)=su(1,1)の既約ユニタリ表現から、contractionによって、iso(1,1)の既約ユニタリ表現を作るというようなことをやるといいと思う。iso(1,1)の(contractionによらない)既約ユニタリ表現については

(1+1)-次元Poincare代数の表現論
http://formalgroup.tumblr.com/post/124635771365/1-1-%E6%AC%A1%E5%85%83poincare%E4%BB%A3%E6%95%B0%E3%81%AE%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E8%AB%96

などを参考。



問題2は必須というわけでもないけど、masslessの場合の計算は、

Maxwell方程式の表現論
http://d.hatena.ne.jp/m-a-o/20150621#p1

でやっているので、massive版も一応やろうという話。

若干気になるのは、masslessの場合、光円錐上で特異性を持っていて、以前計算した時は、ただの有理関数として代数的に扱ったけれども、massiveの時は、多分Bessel関数とか出てきて代数的に扱えないかもしれない。それでも、やっぱりある超曲面上で特異になるんじゃないかと思うので、そのへんの扱いをどうするか。予想では、基底は全て同じ超曲面上に特異性を持つので、この超曲面を除いた領域で考えればいいと思う。masslessの場合は、どの基底もt^2-x^2-y^2-z^2=0上でのみ値が定まらず発散する。勿論、Poincare群の作用には並進があり、並進作用によって、光円錐は動くので、一見奇妙な気がするけど、並進は、Poincare代数の演算子のexponentialで、基底の(可算)無限個の和となるので、光円錐が動くことに問題はない。有限個の基底の和を考える限りは、同じ光円錐t^2-x^2-y^2-z^2=0上で特異となる


#似たような状況として、1/x,1/x^2,1/x^3,...を考えると、x>aにおいて
1/(x-a) = 1/x ( 1 / (1 - a/x) ) = 1/x(1 + a/x + (a/x)^2 + .... )
という等式が成立する。1/(x-a)は1/xを並進で動かしたものでx=aで特異であるけど、一方、右辺は、1/x,1/x^2,1/x^3,...の無限和であり、個々の関数はx=0で特異となっている

あまり綺麗な解決というわけでもないので、もっといい理解の仕方があるかもしれない。



問題をやるのに、物理の知識は微塵も必要ないけど、数学を多少出来る必要はある。これができれば、QED状態空間の具体的な記述がわかり、相互作用のない場合は、Hamiltonian、運動量、角運動量、boost演算子の全てが具体的に書ける。相互作用がある場合は、上に書いたように、Hamiltonianとboost operatorに相互作用項が入ると思うので、それを決めればいい。まぁダメだったら私の頭が悪かったというだけだし、これで、"QED Hamiltonian"が書けても、それが本当に通常のQEDの結果を再現するのかということは別途示す必要があるので、先は長い。

*1:s-1)/2,(s-1)/2)=s^2]の自由度が消え、2s+1の自由度が残る。ところで、V_{g}^{(s)}V_{fix}^{(s-1)}から来るので、2(s-1)+1=2s-1個分の自由度はゲージ変換の自由度であり、従って(2s+1)-(2s-1)=2成分が残る。これは、電磁波、重力波に共通する自由度で、ヘリシティ正負の2成分があることに対応する。ということから、論文には書いてないけど V_{fix}^{(s)} \simeq V_{g}^{(s+1)} が成立すると思われる(多分) それなりに色々な計算をした結果得られるものがH_{+s} \oplus H_{-s}なので、苦労した意味はあるのか、という疑問はある(古典的には、ポテンシャルを考えることは、物質場との相互作用を書くのに必須だったけど) ※)QED(Quantum Electrodynamics)の状態空間というのは、(電子と光子のみを考える場合)、Poincare代数のスピンs、質量mのユニタリ表現をV(s,m)とする(m>0の時は、通常の既約ユニタリ表現。m=0の時は、massless既約ユニタリ表現2つの直和)時、 [tex:H_{QED} = S^{*}(V(1,0