Why g〜(π^2)

http://godplaysdice.blogspot.com/2007/09/why-g-2.html

(SI単位系における)重力加速度と円周率の二乗はほぼ等しいけども、それには理由があるという話。随分昔に読んだのだけど今頃になって訳。一部本筋に関係ない部分の訳をはしょった



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地球表面に於ける重力加速度は大体9.81m/s^2である。

この2つの数が近い値にあるのは、偶然ではない。


わたしは、Mark Dominusのpost "John Wilkins invents the meter"を読んでこのことに気付いた。1668年、John Wilkinsは"seconds pendulum"、即ち周期が2秒の振り子の長さを以て、1メートルを定義した。これは、大体39.1インチであることが分かった。

現在1メートルは、39.37インチである。


当初は、seconds pendulumの長さが1メートルとなるはずであったが、代わりに北極から赤道までの子午線弧長の1,000万分の1の長さという相当異なる定義が採用された。現在では、1秒間に光がすすむ距離に基づく定義が使われている。Wikipediaによれば、これらの定義は、各々1790,1791,1983年に採用された。後者の2つの間には、更に2つの異なる定義があった。


一般に、振り子の周期は、およそT=2π(L/g)^(1/2)である。ここで、gは重力加速度、Lは振り子の長さ。T=2,L=1とすれば、g=π^2を得る。


わたしが思うに、seconds pendulumによる定義が採用されなかった理由は、上記の公式が振れ幅が小さいという近似に依存しているからだと思われる。つまり、振り子の周期は、実際には、重力加速度と振り子の長さ以外に振れ幅に依存する。正確な公式は、以下で与えられる。

従って、主要な誤差は、(1/4)*sin^2(θ/2)で与えられる。例えば、もしθが1度とすると、このずれはおよそ1/50000秒あるいは、一日におよそ2秒となる。この誤差は、そのままメートルの定義における誤差となり、当時のエライ人たちは、これは大きすぎると考えたのだろう。

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John Wilkinsという人物は、日本のWikipediaには記述がなく、「メートル」の項を見ても、そんな人物が関与していたとは書いてないけども、
http://en.wikipedia.org/wiki/John_Wilkins
によると、当時のphilosopherで本を沢山書いたとか、結構名の知れた知識人であったらしい


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AC%E3%83%93
には、
『ジョン・ウィルキンズ(John Wilkins)はその著書"Discovery of a New World"でトルコ人たちの飛行の試みに言及している。』
という記述があるのだけど、時代的に同一人物っぽい


追記)単振り子の周期の振れ幅依存性は、サイクロイド振り子を使えば、原理的には解決できる。このことは、17世紀に、ホイヘンスが発見していた。また、2004年に、以下の論文があるのに気付いた。
Why does the meter beat the second?
https://arxiv.org/abs/physics/0412078
18世紀末のメートル法制定時の議論が書いてあり、seconds pendulumは最有力候補だったが、拒否された理由は、長さの単位が時間の単位に依存することになるためと書いてある。サイクロイド振り子ではなく、単振り子を使おうとしていたようで、振れ角による小さな誤差が、問題とされた形跡はない。当時、どこまで精密に長さを測定できたか考えると、ミリメートル程度は可能だったとして、1メートルの1/1000なので、これより小さな誤差は問題にしても、意味がなかっただろう。

seconds pendulumの最大の誤差要因は、重力加速度が(地球の自転による遠心力や、形状が真球からずれるため)緯度に依存することによるずれで、最大で0.3%程度になるので、これについては、単純に緯度を指定するという解決法が提案されてたようである。重力加速度の高度依存性は、地表付近では、1kmにつき0.03%くらいの誤差なので、これも特に問題にはされてない。

論文には、seconds pendulumで長さを定義することは、HuygensとOle Rømerの示唆が最初だと書いてある(具体的な文献などは何も示されていない)。1668年のJohn Wilkinsの提案は、An Essay towards a Real Character and a Philosophical LanguageのChap VIIの記述を指しているものと思われる