拘束系の数値積分

拘束のあるHamilton系の数値積分について。拘束のある系の運動方程式を出すには、Lagrangeの未定乗数法が知られている。これは、Lagrangianによるものだけど、Legendre変換すれば当然Hamiltonianが出て、あとはHamilton系で考えることもできる。


未定乗数法のいやなところは、3点あって、第一にメカニズムが分からない。変数を機械的に増やして、なんでうまくいくのか。直感的には、拘束条件で縛れば、相空間の次元は、むしろ減るべきなんじゃないのかと思う。第二に、いちいちLagrangianを経由しないと拘束条件がいれられないのも、うっとうしい話。まあ、別にうまくいくからいいんじゃね?とか思わなくもないけど。第三に二点目と関係するけど、そもそもLagrangianが得られないケースはどうすればいいのか謎。正準方程式は"symplecticでないpoisson空間"上でも定義できるけど、symplecticでない場合に、Lagrangianを得る方法はないような気がする。symplecticでない正準方程式の例としては、Lotka-Volterra系とかEulerのコマとか。


例:(半径Rの)球面上に拘束された自由粒子
未定乗数法の場合。
L = \frac{m}{2}(\dot{x}^2+\dot{y}^2+\dot{z}^2) - u(x^2+y^2+z^2-R^2)
というLagrangianを考えて、Euler-Lagrange方程式を出せばいい。uが未定乗数。今の場合は、初期条件とかから、うまくuを決定できる。


Dirac括弧を使う場合。配位空間(x,y,z)に対応する相空間の座標を(q1,q2,q3,p1,p2,p3)とする。運動を球面上に拘束するには、運動量の方にも何かしら拘束がかかっていないといけない。要するに、実は拘束条件が今のままだと不足しているので、全部出す。
H = \frac{m}{2}(p_1^2+p_2^2+p_3^2)
ハミルトニアンで、一個目の拘束条件は
u_1=q_1^2+q_2^2+q_3^2 - R^2=0
で、
u_2=\{u_1,H\}=2m(p_1q_1+p_2q_2+p_3q_3)=0
として、2個目の拘束条件が見つかる。

\{u_1,u_2\}=4m(q_1^2+q_2^2+q_3^2)=4mR^2
を使って、Dirac括弧の関係式として、
[q_i,q_j] = 0 + \frac{1}{(4mR^2)}(\{q_i,u_1\}\{u_2,q_j\} - \{q_i,u_2\}\{u_1,q_j\})=0

[p_i,p_j] = 0 + \frac{1}{(4mR^2)}(\{p_i,u_1\}\{u_2,p_j\} - \{p_i,u_2\}\{u_1,p_j\})=\\0-\frac{1}{(4mR^2)}(-2*q_i*2m*p_j + 2*p_i*2m*q_j)=\frac{1}{R^2}(p_iq_j - p_jq_i)

[q_i,p_j] =  \{q_i,p_j\} - \frac{1}{(4mR^2)}(\{q_i,u_1\}\{u_2,p_j\} - \{q_i,u_2\}\{u_1,p_j\})=\\\delta_{ij} + \frac{1}{(4mR^2)}(0 - 2m*q_i*2q_j)=\delta{ij} - \frac{1}{R^2}q_iq_j
を得る。あとは、通常のように正準方程式を考えればいい。


手順は分かるけども、一体どうしてこれでよいのかやっぱり謎。Poisson代数Aを与えて、拘束条件から生成されるイデアルIを考えた時、一般にA/IはPoisson代数になるとは限らない。これはIが第二種拘束条件から生成される場合でもそうで、Aから素直にPoisson構造は入らないけど、うまく変形してやれば、Poisson構造が入るということで、このPoisson構造がどうして自然なのか?他にやり方はないのか?とか、そういう点については、よく分からない。