非余可換代数としての超Lie代数

非余可換代数ではなく、非余可換余代数というのが正しい表現な気がするけど、冗長な感がある


Lie環の普遍展開環には自然に余積が定義できて余可換になる。超Lie代数に対しても同じように普遍展開環を定義できて、PBWの定理などが成り立つ。余積は入らないので、次数付Hopf代数と考えるのが普通らしい。代わりに、evenな元とは交換し、oddな元(super-Poincare代数ではsupercharge)とは反交換する、$s^2=1$を満たす元sを追加すると、普通のHopf代数にすることもできる


例えば、sl(1|1)の場合、s付きの普遍展開環は代数としては、e,f,h,sで生成されて以下の関係式で定義される
$ef+fe=h$
$eh-he=fh-hf=e^2=f^2=0$
$se+es=sf+fs=0$
$sh-hs=0$


余積$\Delta$は、evenな元はLie環の時と同じようにやって、oddな元はsでひねる。sl(1|1)では
$\Delta(e) = e \otimes 1 + s \otimes e$
$\Delta(f) = f \otimes 1 + s \otimes f$
$\Delta(h) = h \otimes 1 + h \otimes 1$
$\Delta(s) = s \otimes s$


で、例えば
$\Delta(ef+fe)=(e \otimes 1 + s \otimes e)(f \otimes 1 + s \otimes f)+(f \otimes 1 + s \otimes f)(e \otimes 1 + s \otimes e)=(ef+fe) \otimes 1 + 1 \otimes (ef+fe) + (sf+fs) \otimes e + (es+se) \otimes f = \Delta(h)$
等から、ちゃんと代数射になってることが確かめられる


見て分かるとおり、この余積は余可換でない。sl(1|1)の(s付き普遍展開環の)二次元表現
$e(v_0)=v_1 , e(v_1)=0$
$f(v_1)=v_0 , f(v_0)=0$
$h(v_0)=v_0 , h(v_1)=v_1$
$s(v_0)=v_0 , s(v_1)=-v_1$
を考える。

#超Lie代数の表現に対して、sはeven partに+1,odd partに-1で作用するように定義すれば、超Lie代数の表現はs付き普遍展開環の表現に拡張できるし、sの固有値に応じて固有空間分解すれば、even/odd partが復元できる


テンソル積表現を計算すると
$\Delta(e)(v_0 \otimes v_0) = v_1 \otimes v_0 + v_0 \otimes v_1$
$\Delta(e)(v_1 \otimes v_0 + v_0 \otimes v_1)=0$
$\Delta(e)(v_1 \otimes v_0 - v_0 \otimes v_1)=2v_1 \otimes v_1$
$\Delta(e)(v_1 \otimes v_1)=0$
等から、2つの既約な二次元部分表現が存在することが計算できる。Lie環の時と違って、非余可換性の結果として、既約表現に分解しても、対称部分と反対称部分に分かれず混ざり合う。まあ、差しあたって、これで嬉しいのは、手で計算する時、計算間違いが減るくらいしかないのだけど。超対称ゲージ理論の研究は盛んであるけれども、もっと一般に非余可換な対称性を持つゲージ理論の定式化とかすべきかもしれない