higher associativity

higher categoryのcoherence条件は正式にはoperadで定義して、特にhigher associativityに関する部分は、associahedra operadで記述できることになってるらしいけど、アイデア自体は、operadなしでも理解できると思う(associahedronの後にoperadが見つかったのだし)


(1)K4条件の場合
monoidal category/bicategoryのpentagon identityに相当するもの。

f:Hom(x,y)とg:Hom(y,z)に対して、射の合成を、f@g:Hom(x,z)で書くとすると、結合律は
(f@g)@h = f@(g@h)
となる。結合律を、左辺->右辺への項書き換え規則とみなして、4項の積( (A@B)@C )@DをA@( B@(C@D) )に変形することを考える(必要なら、型は適当に推論すること)。以下、面倒なので、( (A@B)@C )@Dを( (AB) C)Dのように書く。二つの書き換え経路があって

((AB)C)D -> (A(BC))D -> A((BC)D) -> A(B(CD))
((AB)C)D -> (AB)(CD) -> A(B(CD))

となる。各書き換えステップを、associatorの合成による射と見なして、両者が等しい(あるいは同型)というのが、pentagon identity



(2)K5条件の場合
5項の積(((AB)C)D)EをA(B(C(DE)))に変形することを考える。書き換え経路は沢山ある

(X) (((AB)C)D)E -> ((A(BC))D)E -> (A( (BC)D) )E -> (A(B(CD)))E -> A( ( B(CD) )E) -> A(B( (CD)E) ) -> A(B(C(DE)))

の最初の1~4番目の部分は、K4に於ける(((AB)C)D)->(A(B(CD)))の書き換えの遠い方であるので、これを近いほうに置き換えると

(P2) (((AB)C)D)E -> ((AB)(CD))E -> (A(B(CD)))E -> A((B(CD))E) -> A(B((CD)E)) -> A(B(C(DE)))

という書き換え経路を得る。(P2)の2~5番目は、K4(A,B,CD,E)を適用できて

(P3) (((AB)C)D)E -> ((AB)(CD))E -> (AB)((CD)E) -> A(B((CD)E)) -> A(B(C(DE)))

を得る。これ以上K4を適用できる場所はない。けど、最後の(AB)( (CD)E ) -> A( B( (CD)E ) ) -> A(B(C(DE)))という部分については、X=(CD)E->C(DE)という書き換えと、(AB)X->A(BX)という書き換えがあり、これら2つの書き換えは独立であるので、若干インチキっぽいけど、これを入れ替える(この入れ替えは、ちゃんと書くにはassociatorのtri-naturalityを使う)ことで、"同型な"書き換え

(P4) (((AB)C)D)E -> ((AB)(CD))E -> (AB)((CD)E) -> (AB)(C(DE)) -> A(B(C(DE)))

を得る。こうすると、(P4)の1~4番目にK4(AB,C,D,E)が適用できて

(Y) (((AB)C)D)E -> ((AB)C)(DE) -> (AB)(C(DE)) -> A(B(C(DE)))

となる。これ以上、短い書き換え経路はないので、書き換え経路の書き換えによって、最長の書き換え経路から最短の書き換え経路を得た。


(X)から(Y)を得る経路は、もう一つある。

(X) (((AB)C)D)E -> ((A(BC))D)E -> (A((BC)D))E -> (A(B(CD)))E -> A((B(CD))E) -> A(B((CD)E)) -> A(B(C(DE)))

(X)には同型な書き換え経路

(Q2) (((AB)C)D)E -> ((A(BC))D)E -> (A((BC)D))E -> A(((BC)D)E) -> A((B(CD))E) -> A(B((CD)E)) -> A(B(C(DE)))

が存在する。こうすると、4~7番目にK4(B,C,D,E)を適用できて

(Q3) (((AB)C)D)E -> ((A(BC))D)E -> (A((BC)D))E -> A(((BC)D)E) -> A((BC)(DE)) -> A(B(C(DE)))

を得る。K4(A,BC,D,E)を、2~5番目に適用して

(Q4) (((AB)C)D)E -> ((A(BC))D)E -> (A(BC))(DE) -> A((BC)(DE)) -> A(B(C(DE)))

これには同型な書き換え

(Q5) (((AB)C)D)E -> ((AB)C)(DE) -> (A(BC))(DE) -> A((BC)(DE)) -> A(B(C(DE)))

があって、K4(A,B,C,DE)の適用によって、(Y)を得る。

(Y) (((AB)C)D)E -> ((AB)C)(DE) -> (AB)(C(DE)) -> A(B(C(DE)))

この2つの"書き換え経路の書き換え"が射として"同じ"というのが、K5条件になる。K6に行くと、もう一段階増えるので、更にめんどくさい


この話自体は、ぱっと見圏論と関係ないけど、実際、これらの条件は、本質的には圏論よりprimitiveなのだと思う(射の結合性は圏の定義だけれども、結合律自体は、圏そのものよりprimitiveなのと同様)。普通の集合論の言葉で、こうした状況を書くのは、若干厄介である一方、圏の言葉で書くと楽な場合がある。例えば、群の各条件を"同型"に弱めるということを考える場合、群をobjectが一つしかないgroupoidと同一視すれば、objectが一つしかない2-groupoidを考えるのが適切だという具合に(こういうものは、2-groupという名前が付いている)。

そういうわけで、この手の条件は、圏論と結び付けられることが多いけれども、こういう条件の自然さは殆んど明らかであるように見えるし、結合則同様至るところに存在するのだろうと思う。最近では、petangon equationは数理物理の至るところで見るようになったし、higher commutativityであるYang-Baxter方程式やZamolodchikovのtetrahedron equationは最初から数理物理に起源があるし、もっと高次の結合則/可換則も、いずれ自然に現れるのだろうと思う。


[higher category関連文献(その2)]
Higher-dimensional Algebra and Topological Quantum Field Theory
http://arxiv.org/abs/q-alg/9503002

The algebra of oriented simplexes
http://maths.mq.edu.au/~street/aos.pdf

Configuration spaces from Combinatorial,Topological and Categorical perspectives
http://maths.mq.edu.au/~street/BatanAustMSMq.pdf

Comparing operadic theories of $n$-category
http://arxiv.org/abs/0809.2070

Spans in 2-Categories: A monoidal tricategory
http://arxiv.org/abs/1112.0560