星のKirby

一昨日聞いた話。読んでないけど、このへんの話だったっぽい
http://projecteuclid.org/DPubS?verb=Display&version=1.0&service=UI&handle=euclid.kmj/1257948896&page=record


1)任意の3次元閉多様体はある枠付き絡み目に沿ったDehn手術で得られる
2)ある2つの枠付き絡み目に沿った手術で得られる多様体が同相となるための必要十分条件は枠付き絡み目がKirby moveで互いに変形可能なこと(Kirbyの定理)
という2つの古典的な結果があって、このことから、3次元多様体の不変量<=>Kirby moveで不変な枠付き絡み目の不変量という対応が得られる。この定理が得られた当時は、枠付き絡み目の不変量なんて殆ど知られてなかったんじゃないかと思う。というか、今みたいに、結び目が流行ってなかったと思う


一方、結び目とか絡み目とは特に関係ないトポロジーの世界で、Casson不変量というものが考えられていたらしい。
http://www.math.sci.osaka-u.ac.jp/~konno/sympo/tagajo08/ohta.pdf
Casson不変量は、整係数ホモロジー球面に対してのみ定義されていたけども、Casson-Walker不変量として、有理係数ホモロジー球面に拡張され、Casson-Walker不変量は、現在は任意の閉3次元多様体にまで拡張されて、Casson-Walker-Lescop不変量(CWL不変量)と呼ばれている
http://en.wikipedia.org/wiki/Casson_invariant
けども、有理係数ホモロジー球面を外れると「ほとんどの場合に」0になるというようなことを言っていた


原理的には、ある枠付き絡み目に沿った手術で得られる多様体のある位相不変量は、元の枠付き絡み目のみから、枠付き絡み目の不変量として計算できるはずだけども、簡単に実行できるかは自明でない。で、ある種の有理係数ホモロジー球面に対するCasson-Walker不変量の場合には、絡み行列というものから初等的に計算する公式が知られているらしい。一般のCWL不変量に対する同様の公式は、今のところunknown?


もし適当な位相不変量を枠付き絡み目の不変量として得る公式が分かったなら、この公式から得られる不変量がKirby moveで不変であることは間接的には証明できているわけだけども、directに証明してやりたいと考える。これをCasson-Walker不変量について実行してやりましょうというのがテーマであったらしい。


不幸なことに、現在Casson-Walker不変量を計算する公式は、絡み行列のみから決まるので枠付き絡み目の不変量にはなるけども、一部の有理ホモロジー球面に対してしか正しくなく、Kirby moveで不変ではない。そこで代わりにHabiro moveというのを使うというのが主旨。整係数ホロモジー球面と一部の有理係数ホモロジー球面を与えるような2つの枠付き絡み目がHabiro moveで移りあうことが、得られた多様体が同相になるための十分条件という定理が成立してなんとかうまくいくらしい。


というとこまでは何となく分かったけど、最終的に、Habiro moveの性質として何が既知で、何が証明すべきことなのか、よく分からなかった。このへんの論理展開はよく分からないけど、紆余曲折を経て、問題は、絡み行列Aに関する直交群
O(A , \mathbf{Z})=\left{g \in GL(n , \mathbf{Z})|^tgAg=A \right}
の生成元を決定するという代数的な問題に帰着するらしい。生成元を決定するのは、そこまで難しくないと言っていたけども、具体的にどうするのか聞きそびれた。気合で頑張れば何とかなるのか、なんかsystematicにやる方法があるのか


Jones多項式以来、結び目・絡み目の不変量は、沢山発見されていて、枠付き絡み目の量子不変量というものも、やっぱり沢山発見されているらしい。CWL不変量も、そんな不変量の一つとして捉えることができて、ある種のTQFT(Witten-Rozansky etc.)から出てくるというような話もあるらしい。
http://arxiv.org/abs/math.GT/9911049


(枠なしの)絡み目の場合は、braided tensor categoryをぽっと与えると、自明でないbraid群の表現が一杯作れて、適当にtraceを取ったりすることで、不変量が大量生産できるという仕組みがあった。そんなわけで、枠なし絡み目の場合は話は全部代数的に済む。枠付き絡み目も同じようなシナリオで代数的に完結できるとよいのだけど、今のところ、幾何学的な議論が幅を利かしていて複雑でややこしい事態になっているように見える。