常微分方程式のLie symmetryと宇宙の作者の気持ち

たまたま、以下の論文を読んだところ、2階の常微分方程式y''=0のLie symmetryというものが、sl(3,R)をなすと書いてあった。

Symmetries, integrals and solutions of ordinary differential equations of maximal symmetry
https://doi.org/10.1007/s12044-010-0001-8
[PDF] https://www.ias.ac.in/article/fulltext/pmsc/120/01/0113-0130

この結果自体は、19世紀に、Lieによって知られていたらしい。上の論文では、独立変数、従属変数がx,yだけど、ここでは、t,xを使うことにする。


常微分方程式x''(t)=0は誰でも解けるので、対称性とか面倒なことを考えてどうするんだという気もするけど、やってみる。
\hat{x}=\hat{x}(x,t) , \hat{t}=\hat{t}(x,t)という変換で、\dfrac{d^2 \hat{x}}{d \hat{t}^2} = 0を満たすものを探そうというのが基本的発想らしい。対称性という言葉は、何かを不変にする(可逆な)変換を指すけど、今の場合は、素朴に微分方程式を不変にする変換を考えている。

このような変換は一杯ある。例えば、定数Cに対して
\hat{x} = x + C t
\hat{t} = t
なども条件を満たす。

それで、このような変換を生成する無限小変換を全部決定しようというのが、Lieの発想だったらしい。具体的には、新しいパラメータaにも依存する\hat{x}=\hat{x}(x,t,a) , \hat{t}=\hat{t}(x,t,a)
\dfrac{d \hat{x}}{d a} = X(\hat{x},\hat{t})
\dfrac{d \hat{t}}{d a} = T(\hat{x},\hat{t})
\hat{x}(x,t,0) = x
\hat{t}(x,t,0) = t
を満たし、
\dfrac{d^2 \hat{x}}{d \hat{t}^2} = 0
となるようなX(x,t),T(x,t)を探すという問題になる。X(x,t)=t , T(x,t)=0なら、
\hat{x}(x,t,a) = x + a t
\hat{t}(x,t,a) = t
で、上に書いた変換が出てくる。

\hat{t}(x,t,\epsilon) = t + \epsilon T(x,t) + O(\epsilon^2)
\hat{x}(x,t,\epsilon) = x + \epsilon X(x,t) + O(\epsilon^2)
として
\dfrac{d \hat{x}}{d \hat{t}} = \dfrac{x' + \epsilon(X_{t} + x' X_{x}) + O(\epsilon^2)}{1 + \epsilon (T_{t} + x' T_{x}) + O(\epsilon^2)} = x' + \epsilon(X_{t} + x'(X_{x} - T_{t}) - (x')^{2})T_{x} + O(\epsilon^2)
だから、
\dfrac{d \hat{x}}{d \hat{t}} = x' + \epsilon U + O(\epsilon^2)
の形になる。

同様に、やや面倒な計算をすると
\dfrac{d^2\hat{x}}{d\hat{t}^2} = \dfrac{d}{d \hat{t}} (\dfrac{d \hat{x}}{d \hat{t}}) = \dfrac{d}{d\hat{t}} ( x' + \epsilon U + O(\epsilon^2)) = x'' + \epsilon A + O(\epsilon^2)
の形で書け、
A = X_{tt} + x'(2 X_{xt} - T_{tt}) + (x')^2(X_{xx} - 2 T_{xt}) - (x')^{3} T_{xx} + x''(X_{x} - 2T_{t}) - (3 x'x'')T_{x}
となる。条件からx''=0で、また、A=0になって欲しいので
X_{tt} + x'(2 X_{xt} - T_{tt}) + (x')^2(X_{xx} - 2 T_{xt}) - (x')^{3} T_{xx} = 0
が満たされればいい。X,Tは、x'とは独立なので、X_{tt} = 2 X_{xt} - T_{tt} = _{xx} - 2T_{xt} = T_{xx} = 0が満たされればいい。

一般解は、8個のパラメータa_{1},\cdots,a_{8}を使って
X(x,t) = a_{1} + a_{2} x + a_{3} t + a_{4} xt + a_{5} x^2
T(x,t) = a_{6} + a_{7} t + a_{8} x + a_{4} t^2 + a_{5} xt
になる。

無限小変換をベクトル場X(x,t) \dfrac{\partial}{\partial x} + T(x,t) \dfrac{\partial}{\partial t}の形で書くと、論文の式(2.4)にある通りの結果となる
 G_{1} = x \partial_{x}
 G_{2} = \partial_{x}
 G_{3} = t \partial_{x}
 G_{4} = \partial_{t}
 G_{5} = t \partial_{t} + \dfrac{1}{2} x \partial_{x}
 G_{6} = t^2 \partial_{t} + xt\partial_{x}
 G_{7} = x \partial_{t}
 G_{8} = x t \partial_{t} + x^2 \partial_{x}

x,tを、力学の空間変数と時間変数と思えば、x''(t)=0は、ニュートン力学自由粒子運動方程式で、G_{2},G_{4}は空間並進と時間並進に対応し、G_{3}は、Galilean boostに対応する。この3つが、空間1次元のガリレイ対称性を作る。

G_{1}は、空間変数のスケール変換で、G_{5}は、時間変数と空間変数をスケール変換する。G_{6}が生成する大域変換を計算すると
\hat{x}=\dfrac{x}{at + 1} . \hat{t} = \dfrac{t}{at + 1}
になる。

G_{4},G_{5},G_{6}は閉じたLie環をなし、sl(2)と同型になる。この3つの無限小変換で生成される大域変換は
\hat{t} = \dfrac{a t + b}{c t + d} , \hat{x} = \dfrac{x}{c t + d}
の形で、a d - b c=1を満たす。特に、時間変数に対しては、一次分数変換の形。

G_{7}は、Galilean boostG_{3}と、x,tの役割が逆になったもの。G_{8}は、G_{6}と、x,tの役割が逆になったもの。


G_{2},G_{3},G_{4}は、一次元ガリレイ代数の生成元だけど、G_{2},G_{3},G_{4},G_{5},G_{6}は、一次元シュレディンガー代数(シュレディンガー群という方が一般的だけど、Lie環を考えるので、"代数"としておく)で質量を0にしたものと同型になる。シュレディンガー代数は、自由粒子シュレディンガー方程式の対称性で、多分、1970年代初頭に、そう命名された。

The maximal kinematical invariance group of the free Schrödinger equation
https://doi.org/10.5169/seals-114417

シュレディンガー代数はガリレイ代数を部分群に含んでいて、量子力学で、ガリレイ対称性を考えるには、中心拡大が必要で、空間並進演算子とGalilean boost演算子は非可換になる。古典的には、[G_{2},G_{3}]=0で、Galilean boostと空間並進は可換なので、中心拡大項を0にしないと、上のLie symmetryと同型にならない。

The Maximal Kinematical Invariance Group of the Harmonic Oscillator
https://www.e-periodica.ch/cntmng?pid=hpa-001:1973:46::960

調和振動子シュレディンガー方程式も、同じ対称性を持つ。調和振動子自由粒子は、互いに変換可能なので、当たり前かもしれない(物理的には、散乱状態しかない自由粒子と、束縛状態しかない調和振動子が"同じ"というのは、不思議なことかもしれない)。熱方程式も同じ対称性を持つので、この対称性は、19世紀には知られていたという記述も見るけど、確認はしてない。


そんなわけで、8つのLie symmetry、3つのガリレイ対称性がある。G_{2},G_{3},G_{4},G_{5},G_{6}は、シュレディンガー方程式の対称性から来ているのだけど、ネーターの定理によって対応する保存量が存在する。なので、ネーター対称性とでも呼べばいいかもしれない。

Lie symmetryから発見的に、ネーター保存量を見つけるために、まず、ベクトル場G_{i}のprolongationを考える。
\hat{t}(x,t,\epsilon) = t + \epsilon T(x,t) + O(\epsilon^2)
\hat{x}(x,t,\epsilon) = x + \epsilon X(x,t) + O(\epsilon^2)
の時
\dfrac{d \hat{x}}{d \hat{t}} = x' + \epsilon U(x,t,x') + O(\epsilon^2)
だったので、u=x'を新しい変数と見て
G = X(x,t) \partial_{x} + T(x,t) \partial_{t}
に対して、
G^{[1]} = X(x,t) \partial_{x} + T(x,t) \partial_{t} + U(x,t,u) \partial_{u}
という(x,u,t)空間のベクトル場を考える。これは、ベクトル場を、Jet spaceに拡張してることに相当する。

Uは既に計算した通り
U(x,t,u) = X_{t} + u(X_{x} - T_{t}) - u^2 T_{x}
となる。

例えば
G_{1}^{[1]} = x \partial_{x} + u \partial_{u}
G_{2}^{[1]} = \partial_{x} + 0 \cdot \partial_{u}
G_{3}^{[1]} = t \partial_{x} + \partial_{u}
G_{4}^{[1]} = \partial_{t}
G_{5}^{[1]} = t \partial_{t} + \dfrac{1}{2} x \partial_{x} - \dfrac{1}{2} u \partial_{u}
G_{6}^{[1]} = t^2 \partial_{t} + xt \partial_{x} + (x - ut) \partial_{u}
など。

(x,u,t)空間上の二次微分形式として
\omega = du \wedge dx - u d u \wedge d t
を定義する。運動量p = m uとエネルギーH = \dfrac{ m u^2}{2}を導入すると
\omega = \dfrac{1}{m} (dp \wedge dx - d H \wedge dt)
であることに注意。extended phase spaceで、ハミルトニアン=エネルギーという拘束条件を課したものと思ってもいい。

(x,u,t)空間は、3次元空間なので、\omegaは、symplectic形式ではないけど、symplectic多様体のネーターの定理と同様に、(x,u,t)空間のベクトル場Zに対して
\omega(Z) = d I_{Z}
を満たすI_{Z}が存在すれば、ネーター保存量となる。保存量なので、I_{G}の時間微分は0になる。

今考えるのは、(存在すれば)I_{G_{n}^{[1]}}なので、これをI_nと略記することにする。

\omega(G_{2}^{[1]}) = du = dI_{2}
なので、I_{2} = u + \mathrm{const.}になる(積分定数は重要でないので、このあとは省略する)。

u=x'なので、\dfrac{d I_{2}}{dt} = u' = x'' = 0になる。G_{2}は空間並進で、運動量保存則が対応する。同様に計算していくと
I_{3} = u t - x
I_{4} = -\dfrac{u^2}{2}
で、重心位置の保存と、エネルギーの保存則が出る。この3つは、ガリレイ代数の対称性に対応する保存則なので、よく知られてる。シュレディンガー代数の生成元に対しては、
I_{5} = \dfrac{1}{2} u (x-ut)
I_{6} = -\dfrac{1}{2} (x-ut)^2
となる。これらの保存量に名前はなく、既知の保存量を使って書けてる。特に新しいものは出ないが、これも自由粒子の保存量ではある。

そもそも、自由粒子の解は、x(t)=A+ Btで、保存量はu = Bx - ut = Aの関数で書けるものしか出ない。


G_{1},G_{7},G_{8}については、対応する保存量が存在しないことを確認する。
\omega(G_{1}^{[1]}) = x du - u dx + u^2 dt
で、(x,u,t)空間は、幾何学的には、単なるEuclid空間なので、これが完全形式になることと、閉形式であることは同値。しかし
d \omega(G_{1}^{[1]}) = -2 (du \wedge dx - u du \wedge dx) = -2 \omega
なので、閉形式ではない。

同様に
d \omega(G_{7}^{[1]}) = 3 u \omega
d \omega(G_{8}^{[1]}) = (3ux-3u^2t-u^2)du \wedge dt + (2 - ut -u)dx \wedge du + u^2 dx \wedge dt
で、これらのどのような一次結合も、閉形式にはならない。


以上から、Lie symmetryの内、ネーター保存量を持つものが、シュレディンガー代数をなすということができる。Lie symmetryは、常微分方程式だけでなく、偏微分方程式でも考えることができて、自由粒子シュレディンガー方程式には、G_{7},G_{8}に対応するLie symmetryは出てこない。

自由粒子のシュデレィンガー方程式のLie symmetryは、シュレディンガー代数、スケール変換、あと謎の無限個の族からなる。スケール変換は、色んなところで出てくる"対称性"で、時間の一次分数変換にもスケール変換は含まれるけど、一般的には、ネーターの定理が成立するとは限らない。ネーターの定理を拡張して、スケール変換にも使える形にしようと試みる人もいる。

A Note on the scale symmetry and Noether current
https://arxiv.org/abs/hep-th/9807086

A generalized Noether theorem for scaling symmetry
https://arxiv.org/abs/1903.05070

まぁ、ネーターの定理自体は、純粋に数学上の定理なので、何かしら一般化は出来るかもしれないけど、それに意味があるかは別問題。ネーターの定理が成立しないLie symmetryは、スケール変換以外にも出てくることがある。

この宇宙を作ったクソ野郎が、どういうつもりだったのか分からないけど、ネーターの定理が成立するような対称性を重視してるように見える。



冒頭の論文では、3階の常微分方程式に対して、Lie symmetryを見ていて、これはこれで面白いと思う。上で見たような点変換以外に、点変換のprolongationでない接触変換が3つあって、それらを合わせると、Lie代数sp(4,R)をなすらしい。点変換だけ見ても、十分な対称性を得られないというのは、多分、一般的によくあることなんだろうと思う。

3階の微分方程式接触変換は、最近でも論文が書かれている。例えば、以下は、適当に検索して出てきた論文。

Third order ordinary differential equations and Legendre connections
https://doi.org/10.2969/jmsj/05040993

Geometry of Third-Order Ordinary Differential Equations and Its Applications in General Relativity
https://arxiv.org/abs/0810.2234

Geometry of third-order ODEs
https://arxiv.org/abs/0902.4129

偏微分方程式では、KdV方程式の対称性が、点変換だけ見ていたのでは十分でない別の例だと思う。KdV方程式を不変に保つ点変換を考えても、1次元ガリレイ群とスケール変換しか出てこない。KdV方程式の対称性を扱う枠組みとしては、Lie-Bäcklund symmetryなどがある。KdV方程式のLie-Bäcklund symmetryと保存則には、対応関係がある。KdV方程式が、Euler-Lagrange方程式になるようなLagrangian密度は知られてないが、KdV方程式と殆ど等価な方程式を与えるLagrangian密度は知られている(誰が考えたのか知らないけど、arXiv:9210226v1とかに書いてある)。


点変換でない対称性を調べるという問題は面白いと思うけど、置いておいて、ここでは、二次元空間の自由粒子についても、一次元空間と同様の議論が出来ることを概観しておく。空間変数をx,yに、時間変数をtにする。

微分方程式x''(t)=0,y''(t)=0を考える。やることは、さっきと同じだけど、計算は、やや長いので省略。結果として、Lie symmetryの生成子は15次元のLie環を作る。出てくるベクトル場は
\partial_{t} , \partial_{x} , \partial_{y}
t \partial_{x} , t\partial_{y} , t \partial_{t} , x\partial_{x} , x \partial_{y} , x\partial_{t} , y \partial_{x} , y\partial_{y} , y \partial_{t}
t(x\partial_{x} + y\partial_{y} + t \partial_{t}) , x(x\partial_{x} + y\partial_{y} + t \partial_{t}),y(x\partial_{x} + y\partial_{y} + t \partial_{t})
になる。一般に、空間の次元がnの場合は、(n+2)^2-1個のベクトル場が出ると思う。

自由粒子の場合、xとyの任意の線型結合も、2階微分が0になるので、単なる空間回転より多くの対称性がある。二次元シュレディンガー代数は9次元で、内一つは、中心拡大項。なので、空間変数の線形変換は殆どがネーター対称性ではない(と予想される)。

ベクトル場G = X \partial_{x} + Y \partial_{y} + T \partial_{t}のprolongationを考える。u=x',v=y'として
G^{[1]} = X \partial_{x} + Y \partial_{y} + T \partial_{t} + U \partial_{u} + V \partial_{v}
U = X_{t} + u(X_{x} - T_{t}) + v X_{y} - u^2 T_{x} - uv T_{y}
V = Y_{t} + + u Y_{x} + v(Y_{y} - T_{t}) - v^2 T_{y} - uv T_{x}
となる。

さっきと同じく、(x,y,u,v,t)空間上の二次微分形式を
\omega = du \wedge dx + dv \wedge dy - u du \wedge dt - v dv \wedge dt
で定義する。

例えば、G = y \partial_{x}に対して、prolongationは
G^{[1]} = y \partial_{x} + v \partial_{u}

\omega(G^{[1]}) = y du - v dx + uv dt
となる。これは閉形式ではない。




Lie symmetryが物理の問題で考えられるようになったのは、比較的最近のことらしい。多くの(簡単な)微分方程式に対して、Lie symmetryの計算が、1970年代頃から、行われるようになったっぽい。

(古典)一次元調和振動子も、自由粒子と同型なLie symmetryを持つことは、以下に書いてある。
The Lie group of Newton's and Lagrange's equations for the harmonic oscillator
https://doi.org/10.1088/0305-4470/9/4/007

ネーター保存量を持つものに限定すると、シュレディンガー代数と"同じ"Lie環が得られるという議論は、以下でされている。
Symmetry groups and conserved quantities for the harmonic oscillator
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0305-4470/11/2/005

調和振動子自由粒子は、互いに変換可能なので、同じ結果が成立するのは、当然ではある。


(古典)Kepler系のLie symmetryは、以下で計算されている。

On the Lie symmetries of the classical Kepler problem
https://doi.org/10.1088/0305-4470/14/3/009

この論文では、スケール変換とRunge-Lenzベクトルが対応するようなことを述べていて、何を言ってるのかよく分からないけど、多分正しくない。そもそも、対称性の(生成子の)数と保存量の個数が合ってない。

Noether’s theorem and Lie symmetries for time-dependent Hamilton-Lagrange systems
https://doi.org/10.1103/PhysRevE.66.066605
[PDF] https://web-docs.gsi.de/~struck/hp/noether/noether.pdf

は、流し読みする限り、(二次元Kepler系における)Runge-Lenzベクトルに対応するLie symmetryとして
(q_{1}\dot{q_{1}} + q_{2}\dot{q_{2}}) \dfrac{\partial}{\partial q_{n}}
を考えればいいと述べている。これも正しくないように思える。これらの生成子が、どういうLie環を作るのか、prolongationを計算しないといけないので、やってないけど、正準形式でのPoisson括弧と同じ交換関係を満たさないのでないかと思われる。

正しい答えは、正準形式で書いて、Runge-Lenzベクトルに対応する無限小生成子の計算をすれば分かる(Poisson括弧の計算をするだけ)はず。多分、以下が答えだと思う。
K_{j} = \sum_{i=1}^{n} (2 \dot{q_i} q_{j} - q_{i} \dot{q_{j}} - (\sum_{k=1}^{n} q_{k}\dot{q_{k}}) \delta_{ij})\dfrac{\partial}{\partial q_{i}}
これは、点変換だけ見ていても、ネーター対称性を得るには十分でないことがあるという一つの例と思われる(解析力学の教科書とかで、一般化座標の微小変換を考える時、どのようなクラスの変換を考えてるか明記されてないことが多いようなので、注意する必要がある)。

前者の論文のAbstractで、Runge-Lenzベクトルが、"“non-Noether invariant”(この表現は、後者の論文にある)だとされているけど、正準形式で見れば、"Noether invariant”と見る方が自然。




spectrum generating algebraとの関係について。

調和振動子の対称性とspectrum generating algebra
https://m-a-o.hatenablog.com/entry/20161117/p1

では、調和振動子の"対称性"として、symplectic代数の作用を書いた。spectrum generating algebraが何を不変にしてるのかは、よく分からない(古典的には、symplectic形式を不変にしてはいるけど...)

symplectic群Sp(2n,\mathbf{R})の部分群として、SL(2,\mathbf{R}) \times O(n)があって、自由粒子の場合、SL(2,\mathbf{R})が、時間の一次分数変換、O(n)は空間回転を与える。自由粒子の場合、空間並進とGalilean boostの無限小生成元、ガリレイ代数の中心拡大項(質量に相当する)は閉じたLie環を作り、Heisenberg代数と同型になる(古典的な場合は、中心拡大項はいらないので、群の次元は一つ小さくなる)。sl(2,\mathbf{R}) \oplus o(n)とHeisenberg代数の半直積が、シュレディンガー代数と同型になる。

こうして、Heisenberg代数が、シュレディンガー代数の部分代数になっている。普通、量子力学におけるHeisenberg代数は、運動量演算子と位置演算子CCR関係から出てくるものだけど、ここのHeisenberg代数は、ガリレイ代数の部分代数に過ぎず、幾分異なる出自を持っている。運動量演算子は、そのままだけど、対になるのは、Galilean boostで、その非可換性は、ガリレイ代数の中心拡大の帰結。

Galilean boost演算子は、(自由粒子の)ハミルトニアンとは可換でないけど、i \hbar \dfrac{\partial}{\partial t} + \dfrac{\hbar^2}{2m} \Deltaとは可換になる。