ある種の位相的場の理論(Cohomological Field Theory)の"分配関数"(数学では、descendant potentialという呼び方をする時もある)は
(1)何らかの可積分階層のτ関数になっている
(2)Virasoro constraintsや、より一般にW-constraintsと呼ばれる(通常、線形偏微分方程式系で書かれる)条件を満たす
(3)対数は"free energy"で、その無分散極限はWDVV方程式を満たす(prepotential)
(4)"free energy"部分は、種数展開が出来て、それぞれ種数gのGromov-Witten不変量の母関数になっている(種数0部分はprepotential)
という性質を持つということが経験的に分かってるっぽい。幾何学的にはGW不変量の母関数である一方、代数的にみると、Virasoro代数やW代数は、可積分階層のnon-isospectral symmetryとして現れ、Virasoro/W-constraintsは、"大体"最高ウェイト条件となっている。全く異なる由来を持つ2つの量が一致するということで、面白いのだけど、そうなる理由は分からない


具体例としては(予想も含めると)
・Kontsevich-Witten tau function(二次元量子重力理論の分配関数らしい。KdV階層の解)
・Hurwitz tau function(数学的に発見されて、物理的な模型の分配関数として作られたわけではないっぽい。KP階層の解)
・double Hurwitz numberの母関数(戸田階層の解)
・位相的極小模型の分配関数(2D topological minimal matter+topological gravityと解釈できるらしい。Gelfand-Dikii階層/Drinfeld-Sokolov階層)
・位相的シグマ模型の分配関数(よく知らないのだけど、計算できる例は限られていて、射影空間とかtoric Calabi-Yauとかだと分かるっぽい?旗多様体は?)
・様々な行列模型の分配関数
・Nekrasov分配関数?(まぁ、全然知らない)
・2D large N pure SU(N) Yang-Mills理論の分配関数?(Migdalの公式は、無限個の時間変数を含まないので、何か"変形"が必要)
あたり。必ずしも、"位相的"とは思われてなかった理論も含まれる。


1990年代以降、"数理物理"(ミラー対称性とかSW理論)は、幾何学の言葉で書かれることが増えて、1980年代の話題(ソリトン,CFT,可解格子模型)と断絶してしまった感がある(CFTのことを知らない幾何学の人も結構いるらしい)けど、ちゃんと連続した話ではある