Radon変換

Iso(2)を2次元合同変換群(つまり平行移動の群とSO(2)の半直積)として、pとlを、平面上の点と直線とする。ただし、lはpを含んでいる。で、pを固定するIso(2)の部分群Hと、lを固定するIso(2)の部分群Kを取る。X=Iso(2)/Hは単に元の平面で、Y=Iso(2)/Kは、平面上の直線の同値類の空間になる。それで、あと、Z=Iso(2)/H∩Kとすると、二つの射影p1:Z->Xとp2:Z->Yが自然に定まって、X上の関数fをp1で引き戻し、p2の順像(ファイバーに沿った積分)を取ると、Y上の関数が得られる。これがRadon変換なんだなぁということに、こないだ気付いた。気付いて見ると、それを示唆する記述は何度か目にしていたのだけど、私はアホなので全く分かってなかった。

上のような構造は、double fibrationと呼ばれたりするらしいが、こういうものはLie群Gから、等質空間X=G/H,Y=G/K,Z=G/H∩Kを介して、いくらでも作ることができる。こういうのを使った研究は、100年くらい前にCartanが既にやってたらしい(と昔読んだ記憶が。しかし、当時はdouble fibrationとか考えて何が嬉しいのかよく分からなかった)。あとなんか、上の変換は、こういう風に定式化してしまえば、別に関数に限る必要はなく、ベクトル束に一般化するのは自然な流れだけど、そういうのがtwistor理論で重要らしい(というかtwistor理論の解説を眺めててRadon変換のことに気付いたのだけど)

4次元球面上のインスタントン解を求めるADHM構成の場合、G=SU(4),H=S(U(1)*U(3)),K=S(U(2)*U(2))として、X=G/H=3次元複素射影空間、Y=G/K=Gr(2,4)(Grassmann多様体),Z=Fl(1,2,4)(旗多様体)を考えるらしい。4次元球面そのものではなく、Gr(2,4)を考えるのだけど、4次元球面は、Gr(2,4)に自然に埋め込める。それで、4次元球面上のインスタントン解とX上のある条件を満たす正則ベクトル束とが上手く1:1に対応して、3次元複素射影空間は代数幾何学的な対象なので、非線形微分方程式の解が線形代数の計算で求まることになって幸せになれる。が、このへんの議論はそこそこ長いし複雑なので、きちんとは追えなかった